三千本膠


膠といっても、今では知らん人が多いだろう。煮こごり、動物や魚のゼラチン質から作った天然素材の接着剤だ。
私が子供のころはまだボンドなどという物がなかったから、木の接着にはもっぱら膠が使われていた。
いまでは、各種の合成接着剤があるので、膠の需要は高が知れている。
しかし、それに替えがたい微妙さと、使いやすさという物がある。もっとも、こうした天然素材の接着剤は使用に手間がかかり、1日しきりもたないので、そういう意味では不便な素材だ。

その膠の中で3千本、京上膠という一番基本的な物が、製造中止となった。最後の一軒を継ぐ者が現れなかったのだ。
これにより、多くの伝統的なモノづくりに携わっていた人たちが影響を受ける。
私らの日本画の世界にとっても、非常に大事な物である。

なんとか再建しなければならない。美術学校や各種の絵画団体が、早急に対策を働き掛けて欲しいが、まだその声が聞こえてこない。